移籍金が他選手と比べて破格に高い場合に、「ホームグロウンだから妥当」
こんなコメントを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
プレミアリーグ、MLS、Jリーグ、UEFA主催大会などで採用されているこのホームグロウン制度。
これがどういうものか知ることで、選手への見方が変わったり、移籍市場がより楽しめるようになるかもしれません。
<広告>
ホームグロウン制度の概要
ホームグロウン(以下、「HG」)は、「国内で育てた選手を、自チームに〇人以上は登録しなければならない」という制度です。
国内の選手を若いうちから育成することを促すことが目的で、育成年代の競争力を上げることで、自国リーグや代表チームの戦力底上げに繋がることが期待されます。
プレミアリーグ
国籍に制約はありません。
The Football Association(イングランドサッカー協会。以下、「FA」)に加盟するクラブ、もしくはFootball Association of Wales(ウェールズサッカー協会。以下、「FAW」)に加盟するクラブに、21歳の誕生日を迎えたシーズンの終了までに、継続または通算で、3シーズンまたは36ヶ月間を過ごした選手が対象となります。
各チームのHG基準を満たさない選手(以下、「非HG」)は最大17名とし、チームの登録枠は最大25人とされています。
これはつまり、25人の選手を登録するためにはHG選手を8人確保する必要があることを意味します。
なお、そもそも21歳以下の選手は25人の登録枠に関係なく登録することができます。これは、21歳の誕生日を迎えたシーズンの終了まで有効です。
これを表にまとめると、こんな感じになります。
HG | 非HG | 合計 |
---|---|---|
8人 | 17人 | 25人 |
7人 | 17人 | 24人 |
6人 | 17人 | 23人 |
5人 | 17人 | 22人 |
4人 | 17人 | 21人 |
3人 | 17人 | 20人 |
2人 | 17人 | 19人 |
1人 | 17人 | 18人 |
0人 | 17人 | 17人 |
HG選手がチームにいないと、スカッド全体の人数が少なくなることがわかりますね。
<広告>
UEFA
UEFAチャンピオンズリーグなどのUEFA主催大会で適用されます。
UEFA主催大会では、AリストとBリストの2つがあります。
Aリストは、グループステージからベスト16の間に限り1回だけ変更可能で、最大3名の新規選手が登録できますが、最大25名の登録枠を超えることはできません。
Bリストはいつでも変更が可能で、試合の前日までにリストを提出する必要があります。
Aリスト
- 登録上限は最大で25人で、「協会育成」選手以外の登録上限は17人です。
- 最低2名のGKが必要です。
- 国籍に関係なく、「協会育成選手」は最大8人まで登録可能ですが、そのうち4人が「自クラブ育成選手」である必要があります。つまり、自クラブ育成選手でなくとも協会育成選手を4人まで登録できますが、残り4人は自クラブ育成選手でないと登録できません。
- 「協会育成選手」は、自チームまたは自国内リーグの他チームに、15歳から21歳までの間で3年以上在籍していた選手です。
- 「自クラブ育成選手」は、自チームに、15歳から21歳までの間で3年以上在籍していた選手です。
プレミアリーグの場合と比較した場合に異なるのが次のとおり。
FAW加盟クラブでプレーしていてもカウントされない。
8人のうち4人は、自分のチームの下部組織などで育成した選手である必要がある。
Bリスト
- 要件を満たせば、無制限に登録ができます。
- 要件は、「シーズン開幕21年前の年の1月1日以降に生まれた選手で、15歳の誕生日以降、継続して2年以上、自クラブに所属歴がある選手」です。
- 制限なく、試合に出ることができます(試合ごとに、登録選手であることの届出は必要です)。
<広告>
Cheseaの登録枠はどうなのか?
(※2024年9月25日、内容を更新しました。)
以上を踏まえて、Chelseaの2024年9月25日時点のトップチームの選手をHG選手、非HG選手、U-21選手に振り分けてみましょう。
transfermarkt.jp様に掲載されている情報を参考に作成しています。
誤りなど発見しましたら、ご一報いただけますと幸いです。
なお、2024/25シーズンのChelseaの最新スカッドはこちらのページでご覧ください。
プレミアリーグ
まずは、プレミアリーグに登録する場合の振り分けです。
HG枠
名前 | 生年月日 | 21歳のシーズン終了日 | 通算期間 |
---|---|---|---|
Marcus Bettinelli | 1992/5/24 | 2013/6/30 | 2006-2013 |
Ben Chilwell | 1996/12/21 | 2018/6/30 | 2009-2018 |
Toshin Adarabioyo | 1997/9/24 | 2019/6/30 | 2003-2019 |
Robert Sanchez | 1997/11/18 | 2019/6/30 | 2013-2019 |
Kieran Dewsbury-Hall | 1998/9/6 | 2020/6/30 | 2006-2020 |
Reece James | 1999/12/8 | 2021/6/30 | 2006-2021 |
Jadon Sancho | 2000/3/25 | 2021/6/30 | 2007-2017 |
Cole Palmer | 2002/5/6 | 2023/6/30 | 2009-2023 |
Lucas Bergstrom | 2002/9/5 | 2024/6/30 | 2019-2024 |
Levi Colwill | 2003/2/26 | 2024/6/30 | 2011-2024 |
(参考)レンタル移籍中のHG枠選手
名前 | 生年月日 | 21歳のシーズン終了日 | 通算期間 |
---|---|---|---|
Raheem Sterling | 1994/12/8 | 2016/6/30 | 2003-2016 |
Trevoh Chalobah | 1999/7/5 | 2021/6/30 | 2007-2021 |
Armando Broja | 2001/9/10 | 2023/6/30 | 2009-2020 2021-2023 |
Teddy Sharman-Lowe | 2003/3/30 | 2024/6/30 | 2020-2024 |
Bashir Humphreys | 2003/3/15 | 2024/6/30 | 2019-2024 |
Dylan Williams | 2003/9/13 | 2025/6/30 | 2019-2025 |
Eddie Beach | 2003/10/9 | 2025/6/30 | 2013-2025 |
Alfie Gilchrist | 2003/11/28 | 2025/6/30 | 2014-2025 |
非HG枠
- Filip Jorgensen
- Axel Disasi
- Benoit Badiashile
- Wesley Fofana
- Marc Cucurella
- Malo Gusto
- Moises Caicedo
- Enzo Fernandez
- Cesare Casadei
- Pedro Neto
- Mykhailo Mudryk
- Noni Madueke
- Joao Felix
- Nicolas Jackson
- Christopher Nkunku
計15人
U-21
名前 | 生年月日 | 年齢※ |
---|---|---|
Renato Veiga | 2003/7/29 | 21 |
Carney Chukwuemeka | 2003/10/20 | 21 |
Romeo Lavia | 2004/1/6 | 21 |
Lesley Ugochukwu | 2004/3/26 | 21 |
Omari Kellyman | 2005/9/15 | 19 |
Marc Guiu | 2006/1/4 | 19 |
Chelseaの現状メンバー(2024年9月25日時点)は、HG対象者は10人です。
そして、21歳以下の主力級の選手が多く、登録枠としてはしっかり余裕があることがわかります。
U-21チーム所属の選手がカップ戦などに出場することもありますが、どちらにしても枠に影響はないので、Chelsea公式サイトでシニアチーム所属となっている選手を記載しています。
<広告>
UEFA
Chelseaは2024/25シーズンにUEFA Conference Leagueに出場します。
登録メンバーが次のとおり発表されています。
Aリスト
登録上限は最大で25人です。
国籍に関係なく、8人以上が「協会育成選手」、そのうち4人が「自クラブ育成選手」である必要があります。
- Robert Sanchez
- Lucas Bergstrom(★)
- Toshin Adarabioyo
- Reece James(★)
- Carney Chukwuemeka
- Kieran Dewsbury-Hall
- Jadon Sancho
計7人、うち自クラブ育成選手(★)2人
協会育成選手(自クラブ育成以外)は4人という枠の中で5人、自クラブ育成選手枠は4人中2人です。
枠をオーバーしている一人は、「その他選手」としてカウントしていると思われます。
- Filip Jorgensen
- Axel Disasi
- Marc Cucurella
- Benoit Badiashile
- Malo Gusto
- Renato Veiga
- Enzo Fernandez
- Noni Madueke
- Moises Caicedo
- Cesare Casadei
- Pedro Neto
- Mykhailo Mudryk
- Joao Felix
- Nicolas Jackson
- Christopher Nkunku
- Marc Guiu
計16人(+1名)
最大25名の登録上限のところ、この23名をAリストに登録し、UEFA Conference Leagueを戦っていきます。
Bリスト
- Levi Colwill
- Josh Achempong
- Kiano Dyer
- Tyrique George
- Harrison McMahon
- Max Merrick
計6人
まとめ
ホームグロウン(HG)について、またChelseaの登録枠の現状について解説してきました。
ざっくりまとめると、次のとおりです。
- ホームグロウンはプレミアリーグやJリーグなどで採用されており、国内の選手を若いうちから育成することを促す効果がある
- ホームグロウン選手を登録しないと、全体の登録人数で制約を受けることになる
- Chelseaはリーグで登録枠に余裕があるものの、UEFA主催大会ではやや制限を受けている
プレミアリーグやUEFA主催大会に出場するチームは、HG対象になる選手を一定数確保する必要があるので、該当する選手は必然的に移籍金が高くなるというわけです。
リーグ独自のルールを理解することで、また違う視点からサッカーを楽しめるようになっていただければ幸いです。
そして、スカッドが刷新した新生Chelsaの躍進を期待しましょう!!
come on Chelsea!!!